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蜂の大量死 [books]

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ローワン・ジェイコブセンというジャーナリストのレポート
ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋刊)を読みました。
アメリカを中心に養蜂ミツバチが突然、
死骸も残さずに大量に消えているという現象を追ったノンフィクションです。
2007年春までに北半球のアメリカやヨーロッパのミツバチの4分の1が消えてしまったというのです。
そういうことが現代に起こっているということは知っていました。
NHKかどこかでもドキュメンタリーをやっていたような気がします。
以前からこの著作を拝読したいと思っていたのですが、
ちょっと新幹線に乗る機会が数回あったので、思い切って買ってみましたよ。
感想はというと…とっても面白かったんです。
なのでちょっと紹介。
まあ本の紹介なんて興味の無い方々には苦痛なだけでしょうけれども(笑)。
養蜂の実態やミツバチの生態と共に、問題となっている事象の始まりが描かれます。
そして圧巻なのが、そのCCD(蜂群崩壊症候群)と呼ばれる現象の犯人探しです。
ダニ(蜂に寄生するダニで、多くの大量死の原因はこのダニのせいらしい)から遺伝子組み換え作物、
蜂が犯されるウィルスや農薬、
そして欧米で盛んに行われている移動型養蜂などによる蜂のストレスなど、
その犯人探しのプロセスのレポートは、
つまんない推理小説なんかよりも数倍面白い、
とってもエキサイティングなレポートになっていて、
今まで知る事も無かった蜂を取り巻く商業農業のシステムの問題点の深刻さに驚かされるのです。
そしてなによりも、僕らが口にする食物の実の80%が、
蜂を含む花粉媒介者のお世話になっているという事実です。
もはやミツバチがいなければ、この巨大な食物需要を支えるだけのシステムが成り立たないのだそうです。
まさに原題『実りなき秋』(Fruitless Fall)が現実になってしまうかも知れないのですね。

大きな何かが、微細な範囲で起こっているということは皆が感じています。
そうなってしまった原因を作り出すのを自分たちが担って来てしまったという自覚も皆が感じています。
それらのツケが異常気象や生物異変などの形で噴出するたびに、
言いようの無い不安を覚えずにはいられないものです。
でもそれらを元に戻す方法なんて僕らは知る由もないし、
知る事も無いのかもしれません。
そもそもそんな方法なんていうのはないのかもしれませんしね。
人間が何年も何百年もかけて作り出したシステムを大打撃が襲って初めて、僕らは違う道を模索し始めるものなのです。
そうなる序章はあちらこちらで起こっていると皆が感じています。
本書にはどうすべきかなどという答は書かれていません。
今起きている、今までとは違う事象を紹介しているに過ぎません。
しかも本書のレポートは養蜂や農業の大きな問題が関わっている事象なので、
僕らの生活スタイルの表層を責められる事件でもありません。
それでも大きな地球生命圏の一部として考えると、
自分たちも何かを歪ませているに違いないことは知っています。
でも何にも出来ないんです。
本当は。
問題を作り出す様々なものからの恩恵を深く受けながら、
僕ら一人一人は何にも出来ないんだな。
だからそういう何かを改善しようとしている組織や会社や政治を応援するしかないのかも。
そうか。
それなら出来るかもね。
出来ることを考えてみようと思うんです。
出来ないかもしれないけれども(笑)。

マハロ。
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montblanc

難しい自然科学書かと思いきや、一度読み始めたらその分かりやすいユーモアある文章に引き込まれてしまいました。でも現実を知るとちょっと怖くもなってしまいます。いろいろ考えさせられる本でした。
by montblanc (2010-08-05 23:09) 

alo-had

montblancさん>
面白かったです。
もう一年も前に読んだ本なんですけども。
特に普段生活している分にはまったく知ることのない、
ミツバチに依存したこの社会の有り様を知ってすごくびっくりしましたよ。
「なんとかしなきゃなぁ」
軽くでもそういう意識の提起にはもってこいの本なんですけどね。w
by alo-had (2010-08-05 23:42) 

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