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南アフリカへの想い その2 [music]

Peter+Gabriel.jpg

ピーター・ガブリエル。(Peter Gabriel)
僕の創造の永遠のアイドル。
ジェネシスのリーダー&ボーカリストとして1968年にデビュー。
プログレッシヴ・ロックの雄として人気を博しました。
ジェネシスといえばフィル・コリンズだと思ってる人もいるかも知れませんが、実はピーターが創ったバンドだったんですね。
1975年にソロになってからは、人間の内面や狂気や恐れを描いた作品で独特の世界を生み出していました。
『Ⅰ』『Ⅱ』『Ⅲ』『Ⅳ』とローマ数字を付けたソロ・アルバムを順調に発表。(便宜上ローマ数字を付けただけで、正式のアルバムタイトルはすべて『Peter Gabriel』です。)
その世界は深淵で根源的な問題を歌っていて、とてもマニアックな世界だと認識されていたんですね。
そして遂に『So』を1986年に発表します。
通算5枚目にして初のローマ数字以外のタイトルが付けられたこの『So』は、まさかのPOPアルバム。
全米No.1ヒットの『Sledgehammer』を始め、
素晴らしい楽曲が満載されて世界中で大ヒットを記録しました。


Peter Gabriel - Sledgehammer

この曲は87年のMTVミュージック・ビデオ・アウォーズのベスト・ビデオを獲得。
同アルバムからは、労働者の問題を歌ったケイト・ブッシュとのデュエット『Don't Give Up』も話題になりました。

翌年にワールド・ミュージックをプロデュースしてリリースするレーベル『リアル・ワールド・レコーズ』を創設します。
かねてより他民族の音楽に傾倒していたピーターの悲願が、『So』の大ヒットで実現した形となったんですね。
その後も彼がポップス&ロック・ミュージシャンとして得た収益はすべて彼の根源的な音楽活動へ回されます。
1989年にはピーターの最高傑作との裏呼び声もある『パッション』を発表。
これはマーティン・スコセッシ監督の『最後の誘惑』 (1988年) のサントラという形ですが、長年彼が関わってきた各国の民族楽器とネイティブ・ミュージシャンによるサウンド構築という、彼の追い求めるサウンドのひとつの完成形を示した素晴らしいアルバムとなっています。
ピーターの民族楽器や民族音楽、とりわけアフリカ音楽への関心は『Ⅲ』(1980年)ですでに見ることが出来ます。
のちのピーターの第三世界との関わりの契機となった曲。
それが『Ⅲ』(全英第1位)に収録されて話題になったこの『Biko』です。


Peter Gabriel - Biko

biko_steve.jpg

スティーブ・ビコ。(Stephen Bantu "Steve" Biko)
(ピーターは彼のことを"スティーヴン・ビコ"と呼ぶので、どうも"スティーブ・ビコ"という響きに馴れない僕なのです - 笑)
当時人種差別の極みとも言える「人種隔離政策=アパルトヘイト政策」を実施していた南アフリカ共和国。
そんな絶望的な時代に反アパルトヘイトを唱え、
黒人たちの意識の向上と開放を目指した黒人開放活動家・ビコを歌ったこの曲。
ダークサイドと希望の光の両方を併せ持つと謳われるピーターのあの声で歌われるこの曲は衝撃でした。
のちに『遠い夜明け』(1987年)という映画にもなりますが、この1980年当時は僕はこの曲でアパルトヘイトとビコの存在を知ったんですね。
「対決とは暴力を生まないのか?」という白人司法の言葉に
「あなたと私は今ここで対決していますが、ここに暴力はありません」と放つビコ。
多くの支持者を得ながらも、裁判の後、拷問により死亡します。
「非暴力」の活動家としてのビコの本質に触れて感動したり啓蒙されたりするよりも、
まだ10代だった僕はその「人種隔離政策」の存在自体に激しい憤りを覚えたものです。

音楽の力。
「実はビコを利用してるだけなんじゃないか?」と自問自答することもあったとピーターは後に述べています。
彼には商業音楽でもある自らの音楽活動と、真に伝えたい創造としての自らの音楽とのバランス上、深く悩まなければいけないくらいに重い問題だったのかもしれませんね。
それでも僕は彼のこの曲でビコを知り、
南アフリカ共和国というとんでもない国があるのだと知ったわけです。
おそらく、ピーターのその後の彼の第三世界の音楽への関わりを考えると、ビコを歌い、話題になり、啓蒙活動も兼ねながら、自らも成功した罪滅ぼしの意識もあったのではないかと推測します。
アフリカを音楽や芸術の楽園だと紹介し、
様々な埋もれたネイティヴ・ミュージシャンの発掘や、芸術家の発掘を通じて、
自らが主催する今や世界最大規模の民族音楽のフェスティバル『WOMAD』への出演や
『リアル・ワールド・レコーズ』からのリリースなどを積極的に行うピーターには、
あのビコを取り上げた最初のモチベーションをベースとしているような気がしてならないのですね。

民族音楽の発展や紹介に尽力していたピーターは、長い沈黙の後、1992年に『So』に続くオリジナル・アルバム『US』を発表します。
前作のPOP路線を踏襲しつつも、民族音楽との融合をさらに押し進めたサウンドが話題になりました。


Peter Gabriel - Come Talk To Me

1993年には横浜ランドマークにて、世界中から集められた芸術家たちが『US』の楽曲をモチーフに作品を制作した展覧会『ART FROM US』も開催されました。
ワイアレス・ヘッドフォンを付けてブースを廻ると、境目できっちり曲が切り替わるハイテクにびっくりしたのを覚えています。
日本からは草間彌生さんが参加していますね。

時代は流れ、アフリカはとても近い存在となりましたね。
決してピーターのおかげというわけではないのですが、
それでも多くの人が立ち上がり、関わり、動かし、
南アフリカ共和国を変えて行ったのですね。
その南アフリカ共和国に、そのW杯がやってくる時代がくるなんて。
日韓共催よりもびっくりです。
だってアパルトヘイト政策が終了したのはつい最近のことなんですよ?
政治や国際社会が、そして音楽家たちがここまでの道を築いてきたのですね。
より強固ななにかをこのW杯がこの地に植え付けてくれることを心から祈りたいと思います。

この大会を、ビコが見たらどんなに喜んだだろう。
そんな風に思える実に特別な大会なのです。

マハロ。

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