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大きな調整 [works]

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『詩集 夢の先』(田中裕子/著 書肆侃侃房/刊)という本の装丁をしました。
僕にとって初めての詩集の装丁のお仕事でした。
とっても綺麗な本に仕上がりましたよ。
いいお仕事をさせていただけたな、と喜んでいる次第です。w

   *****

詩集というのは、他の本と少し違って、
言ってみれば「なんでもあり」の表紙なんですね。
その詩や詩人のイメージを表していればなんでもいいんです。
文字だけで構成してもいいし、
写真を使ってもいいし、
絵を使ってもいいし、
ラインやノイズで表現してもいい。
装丁のアイデアを反映させる上で最も自由なジャンルの本だということが出来ます。

でもね。
だからこそすごく難しいんです。
この「自由」というのは
とっかかりのアイデア出しの時点での「自由」に限定される、ということなんです。
どの方向で行くか、どういう構成でいくのか。
それを選んで提出するのはデザイナーの自由なんですね。

難しくなるのはここからなんです。
僕はもちろん、
デザイナーのアイデアが100%活かされる、
というような地位にいるデザイナーではありませんから(笑)、
著者や出版社の意向を反映させてあげなければなりません。
ということは第三者の「好み」の介入が必ずある、ということなんです。
僕が選んだアイデアが、
第三者の嗜好の範囲内かどうかなんて解る分けないので、
そこで必ず色んなせめぎ合いがあるわけです。
テーマや方向性がある程度限定されてる他の本よりも、
この「好み」のせめぎ合いは大きく強くなるんですねー。w
この場合のせめぎ合いはもちろん「闘い」ではありません。
別の言い方をすれば「調整」ということになります。
第三者の「こうして欲しい」「ああして欲しい」を
少しずつ形にしてあげなくてはならないんですね。
もうこの時点で他の本と同じような制作過程になってしまうわけなんですね。
しかもちょっと「大きな調整」を余儀なくされるんです。
今回も結果的には色んなパターンを創ることになりましたが、
最終的には僕が描いた抽象画を使ったパターンが採用になりました。w

いくら「大きな調整」だとしても、著者も出版社も、
僕の最初に示した方向性やアイデアを大きく逸脱するような「調整」を強要することはまずありません。
そこは出版社とデザイナーの暗黙の許容というか、
このデザイナーを選んだという責任を出版社も担ってくれているというか、
フィニッシュがスタート時と全然違う方向性になってしまったとしても、
その過程にはどこか必ずデザイナーへのリスペクトを感じます。
そこが出版社の素晴らしいところなんですね。
制作会社の仕事もたまにさせていただくこともありますが、
「デザイナーのアイデアなんて必要ないんだよ!」的な仕事もあったりしますから。
そういう時は「受けて失敗したなぁ」と落胆しながら頑張りますけどもね。w w w

   *****

著者や出版社の好みやルールにちょっとずつ近づけながら、
最終的に出来上がった本を、
著者も出版社も喜んでくれれば一番いいんですけどね。
出版社も編集者も読者も、もちろん僕も気に入っていたのに、
のちに著者だけが気に入ってなかったということが判明した本もあって
相当落胆したお仕事もありましたからね。w
だから、著者や出版社の意向は大切にしたいんですよね。
そこはアロハデザインの基本姿勢となっているんですよ。
決して
「デザイナーのアイデアが100%活かされる、というような地位にいるデザイナーではない」
ことだけが原因ではないですから。(笑)

マハロー。


Nicolette Larson - French Waltz

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nice!(71)  コメント(41)  トラックバック(0) 
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コメント 41

kuwachan

こんにちは。
素敵な装丁ですね。紙の質感もとてもいい感じです。
装丁が素敵だと本屋さんで思わず手にとってしまう
こともありますから、とっても大事なお仕事ですよね。
そこが本の良さでもあると思います。


by kuwachan (2010-11-22 12:39) 

mayu

とてもいい感じだと思いますよ!
私も本屋さんで見かけたら買っちゃいます。
出版の方も著者の方も喜んでくれますよ☆
素晴らしい仕事をされてるんですね、憧れます。
こんなクリエイティブな仕事されて江ノ島で…
もう羨ましいでーす(*^_^*)


by mayu (2010-11-22 16:25) 

ami

詩集は読んだことがないのですが、詩集ってこういう世界なんだなあと、思わせる素敵な装丁ですね。

本当に難しいお仕事をされているのですね。
ちなみに田中裕子さんは、女優の田中さんですか?

文学も音楽もうとくてお恥ずかしいです。
故に、皆様のブログが楽しみです。
by ami (2010-11-22 16:26) 

yakko

こんにちは。装丁というのは難しそうですね〜
何となく手にしたくなるように創るというのは、自分の作品を創る以上に大変な気がします・・・
『詩集 夢の先』は落ち着いた色合いで、そっと手に取りたくなります。みなさんがご満足されたことでしょう〜
by yakko (2010-11-22 16:42) 

alo-had

kuwachanさん>
ありがとうございます。
紙のチョイスというのは、実はそんなに自由にはならないんです。
出版社によればまったく選べないところもあります。
まあ、予算の問題ですね。(笑)
バブルの頃ならいざ知らず、基本的に予算を少なくして値段を下げるというのはしょうがないんです。
それでも、編集者がいろいろ工夫して予算組をしてくれるところは色んな紙を使える可能性が広がります。
編集者の力量、と言っていいでしょうね。
そういう人との仕事は楽しいものです。w
by alo-had (2010-11-22 18:05) 

alo-had

mayuさん>
ありがとうございます。
本のデザインは本当に楽しいです。
楽しいだけじゃなく大変なこともたくさんあるんですけどね。w w
でも全然知らない人に買ってもらうための商品を、
自分のセンスや感性を使って生み出すお仕事ですからね。
すごくやりがいのあるお仕事をさせてもらってます。
江ノ島も近くですし。w w
by alo-had (2010-11-22 18:09) 

alo-had

amiさん>
難しいお仕事だと思います。
同じデザイナーという肩書きを持ってしても、
同じ題材をデザインしたらデザイナーの数だけパターンが生まれますからね。
だからこそ僕だけの何かがここにはあるわけでね。w
難しいけれど、そこが一番やりがいのある部分でもありますからね。

ちなみにこの田中裕子さんは女優の田中さんとは別人です。w
by alo-had (2010-11-22 18:15) 

alo-had

yakkoさん>
ありがとうございます。
手に取ってもらうための工夫も色んな方法がありますからね。
でもデザイナーそれぞれにも個性がありますし、
出版社にもいろんな個性があります。
いいベクトルをつなげられるような関係が生まれたら
それはとっても素敵な仕事になります。
いい仕事になってたらいいなと思います。w
by alo-had (2010-11-22 18:23) 

alo-had

だみかんさん>
cjlewisさん>
xml_xslさん>
terrybearさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-22 18:25) 

oko

なるほどなぁ・・・って思いました。
表紙は本の顔ですものね。
コレって決めて本屋さんに行った時ではなく
何となく本屋さんに行ったとき、表紙で
手に取る本って結構ありますねっっっ
素敵な表紙になりましたね♪
by oko (2010-11-22 20:36) 

ぷーちゃん

著者、出版社、それにデザイナー3者の
想いが重なって制作されるんですね。
クリエイティブな仕事って、答えが
一つじゃないだけに難しい、、、けれど
やりがいもあると言った所でしょうか。
な〜んて、知ったかぶり風にいってみたり。
m(u_u)m ペコリ

by ぷーちゃん (2010-11-22 21:43) 

水無月

改めて難しい、でも非常に遣り甲斐のあるお仕事なんだなって思いました。
作り上げる皆さんのイメージが、ぴったり合うというのは素晴らしいことですね。
とても素敵な装丁だと思います^^
by 水無月 (2010-11-22 21:54) 

リン

確かに、テーマがないと難しいですが、やりがいもありますね!
だって本当に真っ白のキャンパスにその本の顔を作っていくんですから(#^.^#)
素敵な関係で素敵な表紙が出来上がったようですね
by リン (2010-11-23 06:46) 

rin

ご訪問とniceをありがとうございました!
ジャンルによって表現の自由さが違うんですね
知らなかったです
とても手にしっくりきそうな感じですね
詩集は何度も読みたくなるのでそういうことも
考えて作られたのかなぁと感じました☆

by rin (2010-11-23 14:31) 

雨香

素敵な質感の紙ですね。
デザインも本当に素敵です!!
手にとって、詩集の世界に入り込んでしまいたい・・・
って感じました。
本屋さんでこの子と出会ったら、吸い寄せられるように触れてしまうと思います。
素敵なお仕事ですね。
by 雨香 (2010-11-23 16:25) 

alo-had

okoさん>
ありがとうございます。
一人でも多くの人に手に取ってもらうにはどうするか。
日々それの闘いなんですよね。
本の装丁って。w w
何が正しいかはいつも解りませんけどね。w w
by alo-had (2010-11-23 18:15) 

alo-had

ぷーちゃんさん>
いやいや。マジでその通りなんです。
正しいことなんてないんです。
でも、色んな要素や条件を吟味して
最良のフィニッシュを考えるんですよね。
だから本の装丁は楽しいんです。w

by alo-had (2010-11-23 18:18) 

alo-had

水無月さん>
ありがとうございます。
でもなかなかぴったりと合うことは難しいので、
どこで着地点を設定するかの調整で同じベクトルを合わせる、という感じですね。w
思うようにはいかないことも多いですが、
やりがいを持って立ち向かいたいと思います。w w
by alo-had (2010-11-23 18:21) 

alo-had

リンさん>
ほんとにそうなんです。
真っ白なところからのスタートは、
難しいんだけれどやりがいもあります。
今回も自分的にはもっと気に入ったパターンもあったのですが、著者と出版社の意向に合わせました。
もっと気に入ったパターンがある、とは言いましたが、
このパターンが気に入ってないわけではありませんからね。w
そういう調整のお仕事なんです。w
いい感じでフィニッシュ出来てホッとしてます。w
by alo-had (2010-11-23 18:25) 

alo-had

rinさん>
いらっしゃいませ。w w
コメントありがとうございます!
そうなんです。
ジャンルと言うか、その本によって自由さの範囲や方向性が変わってくるんですよね。
あらかじめこの本は「緑で行こう」とか、
「自転車をモチーフに」とか、
「ちょっと怖い感じで」とか。
いろいろあるわけですが、詩集はまったくなんでもいい場合が多いのでね。
それだけに楽しいし難しいんですよね。
そんなお仕事やってます。w w
これからもよろしくお願いいたします。w
by alo-had (2010-11-23 18:31) 

alo-had

雨香さん>
ありがとうございます。
いい感じの紙を使わせてくれる出版社もなかなかないんです。
出せば絶対に売れる巨匠作家の本ならいざしらず、
そうじゃない作家の本はなかなか紙を凝れないんですよね。
でも今回は素敵な紙を使わせてくれました。
出版社に感謝です。w w
いい出来だと思える仕事をこれからもしたいですね。w w
by alo-had (2010-11-23 18:38) 

alo-had

kurakichiさん>
(。・_・。)2kさん>
manaさん>
まゆみっふぃさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 18:40) 

alo-had

ドングリさん>
gigipapaさん>
mwainfoさん>
お散歩さん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 18:41) 

alo-had

cheeさん>
yychiroさん>
ショコラ・パパさん>
maroririさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 18:43) 

alo-had

tamanossimoさん>
kaoruさん>
夏海さん>
chik_aさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 18:43) 

alo-had

frogirlさん>
yayu-changさん>
伽耶さん>
末尾ルコ(アルベール)さん。

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 19:14) 

alo-had

makiさん>
ねねさん>
emiruさん>
perseusさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 19:15) 

alo-had

ゆきぽんさん>
めぇさん>
pezzrockさん>
イタリア職人の手作りタイルさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-23 19:18) 

kyo*

素敵な仕上がりですね。*^-^*。
難しいお仕事だと思うのですが・・・
やっぱり素敵で憧れてしまうお仕事です^^*
by kyo* (2010-11-23 21:59) 

chiffon

思わず手にとってしまいたくなる、素敵な本・・・だと思いました。いろんな試行錯誤の末に、こんな素敵な作品が出来上がっていくんですね。
by chiffon (2010-11-24 14:49) 

GRACE

働いていた頃の職場は制服をオーダーしていました。デザイナーさんに。そしてコンペをして。。。
女性の職場だったので、好みはうるさいし使い勝手や色合いデザイン、すべてに沢山の注文を出していました。
それら全てを消化してデザインに仕上げてくださるデザイナーさんってスゴイな!!!って
素人ながらに感じていましたが、
そのデザイナーさん側の視点が少し垣間見れたような気がした記事でした。
苦労して出来上がった作品、まさにわが子のようなお気持ちでしょうね☆
by GRACE (2010-11-24 17:07) 

alo-had

kyo*さん>
ありがとうございます。
難しいですけど、それでも自由の上に構成されるお仕事ですから楽しみも大きいです。
憧れるには結構地味なお仕事なんですけどね。
ほんとは。(笑)
by alo-had (2010-11-24 18:17) 

alo-had

chiffonさん>
ありがとうございます。
もっといい装丁になったのに、というようなパターンも実は結構あったりするんですよ。w w
でもデザイナー自らが一番いいと思ってるものを選んでくれるとは限らないんです。
かといって二番手以降のパターンがつまらないものかというとそうではないところがデザインの面白さですから。w w
まさに試行錯誤の連続です。w w
by alo-had (2010-11-24 18:21) 

alo-had

GRACEさん>
デザイナーが好き勝手やってOKなら、
それはデザイナーではなくて作家やアーティストですからね。
あくまでも商業デザイナーなので、
クライアントや関わった編集者や著者や営業の意見を集約して商品を作らなければならないんですよね。
それでもそのチョイスや吟味のベースはデザイナー自身の個性やセンスですから。
そこから生まれる商品たち。
みんなちゃんと独り立ちして欲しい。
そんな気持ちになります。w w
by alo-had (2010-11-24 18:28) 

alo-had

chieさん>
やまさん>
kakasisannpoさん>
まりっぺ。さん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-24 19:23) 

alo-had

yuuri37さん>
ameyaさん>
月夜さん>
あーちゃさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-24 19:25) 

alo-had

chiraさん>
cookieさん>
ranさん>
choroさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-25 20:05) 

alo-had

rie-klavierさん>
今造ROWINGTEAMさん>
ふゆんさん>
BRUCE06さん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-25 20:07) 

alo-had

みほさん>
ひまわりさん>
Reiさん>
me-coさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-11-27 20:15) 

alo-had

DEBDYLANさん>
youziさん>
プリンさん>
七色音さん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-12-02 16:36) 

alo-had

mariさん>
sakさん>

いつも訪問&nice! ありがとうございます!
また是非覗きにきてくださいね! w w w
僕もまた伺いますね。
これからもよろしくです!
by alo-had (2010-12-18 09:42) 

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